『絶対安全! 原子力はつでん部』執筆日記【3】

 ようやくハイになってきた。
 最初に書いた『9条ちゃん』は、とにかく闇雲に書いていて、執筆当時の気持ちはあんまり詳しく覚えていない。次の『39条ちゃん』のときは割とよく覚えていて、「ある地点」から書くことに至上の快感
が伴うようになった。たぶん『9条ちゃん』の時もそうだったのだろうが、『39条ちゃん』のほうをよく覚えている。やはり最近だからか。
 具体的に言うと、たとえばウブ子の例のセリフを思いついた瞬間だ。あるいはラストシーンだとか、クジラで自慰行為というフレーズだとか、合体シーンとか、時限爆弾の解除とか、そういったアイディアが、物語の中にかちっとはまった瞬間だ。「はやくあのシーンを書きたい」「あのシーンを書くためには伏線としてこういうシーンが要る」とか思うと、書くのがぐんぐん楽しくなった。
 そういう「線」(抽象的ですみません)のようなものを幾重にも絡み合わせて、最終的に一つの落としどころに辿り着かせるわけだが、それを矛盾のないように組み立てるのはあまりに難しい。だから、「道筋」が見えるまでは非常に辛い。
 でろ100(『はつでん部』のこと)は、材料ばかりが膨大にあって、物語を構成する「線」があまりにも煩雑に絡み合っていたから、ちっとも筆は進まないし、書いててあまり楽しくもなかった。ここに来てようやく、「わー楽しい」と思えるようになった。具体的には、太陽学園の校長が登場してからである。
 校長の語りによって、この物語の舞台である現代と、原子力を導入した四十年前というのが一直線に、有機的に繋がり、かつ「テーマ」のようなものも少しだけ浮き彫られてきた。
 ちょっと、あまりにも遅すぎて、正直まだ最後まで書ききれるかもわからない状態なのだが、とりあえず希望は出てきた。楽しい。中盤、ちょっと大変なんだが、終盤はするする書けるだろう。明日の夜までに一通り書き終わりたい。無理かもしれないが、不可能ではない。