執筆にかける時間の話

 今夜が『たたかえっ!憲法9条ちゃん』最終稿(※まだ校正はある)の〆切りなんですが、22時40分現在、まったく終わる気がいたしません。発想が必要なところを詰めているので、衛藤ヒロユキ先生のいう「天使待ち」の時間がどうしても長くなってしまいます。どうも僕は、クラウチングスタート体制のまま精神統一をする時間が長いです。走り始めればけっこうな速さで100メートル駆け抜けるんですが、100メートルしか駆けられない説もあり、進度自体はそれほど早くはありません。ものを書く人はこういうタイプの人が多いと思うんですが、もうちょっといいバランスでやれたらなあと思っています。がんばります。
 
 速筆だとよく言ってもらえるのですが、その理由ははっきりしていて、僕の小説はセリフが多いからですね。モブのセリフとかが異様に多い。しかも、ノリとテンポとスピード感を重視する(というかそういうのが好み)なので、書くときもポンポンやったほうがうまくいくのです。高校時代に演劇の脚本を書いていた癖が、今も残っているという感じです。テンポのいい、会話中心の劇が好きで、そういうのばかり書いていました。
 
 比較的セリフが少なくて、調べ物が多かった『絶対安全!原子力はつでん部』でも、震災が起きてからちょうど3ヶ月で発売(執筆期間は10日くらいと昔のブログにありました)してます。『ぶっころせ!刑法39条ちゃん』は2〜3週間くらいで書いたと思います。『女の子のちんちんって、やわらかいと思う』という短編は2〜3日くらいで一気に書きました。中編『ペド太』はたぶん1週間弱くらいです。ただ、頭の中で転がしてる時間が長いんです。その間に頭の中にだんだん「執筆する可能性のある内容」が溜まっていって、破裂しそうになる頃に書き始めます。元々そういう感じなので、今もぐだぐだ、やっています。
 
『9条ちゃん』の場合は、初めて書いた長編小説だということもあり、かなり時間をかけています。初版が出たのは2009年の5月10日ですが、調べてみたら、1月20日くらいには設定や大まかなストーリーがかなりまとまっています。(ただしその頃のメモを見ると、完成品とはかなり違って、知らないキャラクターもたくさん出てきています。)
 しかし4月10日くらいの段階の原稿を見たら、まだ闘争シーンの途中(全体の半分弱くらい)だったんですね。そのくらいの状態で架神恭介さんにmixiメッセージで送りつけて、むりやり帯文を書いてもらったという……改めて考えればかなり失礼な行為です。当時ももちろん、申し訳ない気分でいっぱいでしたが……。
 ということは『9条ちゃん』の原稿の後半は、3週間くらいで書いたのかなという感じです。と言っても、たぶん最後の数十ページくらいは最後の一晩にがーっとやったと思います。それで初版の終盤はけっこうぐだぐだです。
 第二版の時に、文章を見直して、シーンを付け加えたりして整えました。その追加シーンを思いついたのは入稿日当日の朝8時くらいで、何も思い浮かばずに絶望して散歩していた最中にポンと思いつきました。正午くらいに入稿だったのでかなり急いで書いたのを覚えています。第三版は細部しか変えていません。
 それから3年弱くらいは改版せず、商業化が決まって去年の四月くらいに数十ページの加筆を含む大幅な改訂をしました。その後事情があって全然出版の話が進まなかったのですが、晴れて3月27日に発売予定です。
 それで最後の見直しを今している、というわけなのですが、矛盾点とかを直し、次巻への引きや伏線を整備し、さらに魅力的な展開や小ネタを考えたりしつつ、最初に書いた勢いと持ち味を殺さないように配慮して……みたいなことをしていると、どうしても時間がかかるし、頭も使うというわけなのです。
 
『9条ちゃん』の発想が生まれたのは2009年の1月くらいで、今は2014年の2月。ということはもう、5年間もこの作品について考えているわけです。長い。思い入れも並ではありません。決定版として世に出すにあたって、できるだけ良いものを、と思うのですが、どうなるでしょうか。今のところ200ページくらい手を入れて、かなりよくなっていると自分では思います。最後の50ページくらいを今から見直すのですが、これから朝までの働きによって、この作品の質は決定します。そのプレッシャーが重すぎて、なかなか本格的に取りかかれません。この文章を書くことによって、勢いづけになったらいいのですが……。